2008/10/02
龍皇女婚譚
サラギ城の召使い達が「嵐…」「大恐慌…!」と騒ぎ逃げ惑うのをことごとく無視しサラギ城の廊下を蹴るように足早に進む。
悔しいっ悔しいっ悔しいっ悔しいっ!!
蹴り破られそうになる扉をシラクとラティが慌てて開け放つ中を璃緒はずかずかと進んで行く。
ぱっぱとドレスのリボンを解き脱ぎ始める璃緒に悲鳴を上げながら、シラクは人払いをし厳重に戸締まりをし、ラティは衣装ダンスから着替えを一抱え運んで来た。
「姫様ったら…もう!はしたないっ」
「…はしたない……?」
ユラリと振り返る璃緒に二人は嫌な予感を感じ取り、ひいっと小さく叫び抱き締めあう。
「はしたない!そうよどうせ私ははしたないわよっ王女として未熟よっ弱いわよっ悔し――い!!」
「ひぇっ姫様っはしたなくないですから…言葉のあやです…っ」
「そうですそうです。ひ、姫様落ち着いて…」
慌てて宥める二人を背に璃緒はぎゃんぎゃんと喚き続けた。
「落ち着けぇ!?これが落ち着いていられますか!あんな…あんなクセの強い馬鹿がいるとは思わなかった!えぇパーティーは上手くいったわよ楽しんで頂いたわよあの二人のおかげでね……!……あぁ思い出しても腹が煮えくり返る…っ」
ドレスを脱ぎ捨てながら思い出し、苦虫を誤って食べたような苦い表情を浮かべる。
あの後もレノ大使と犀生皇子にパーティー会場は掻き回された。レノ大使の恥ずかしい程の饒舌ぶりに皆崩れそうになり、犀生皇子のだめ押し変態ギリギリ発言に笑えば良いのか赤面すれば良いのか、悔しい事に私は受け流し方が分からなかった。更に私が主導権を得ようとする度、彼らはタイミング良く私の行動を抑えてきた。
…まさかもう裏で繋がってるって事は…無いわよね…?
むしろ牽制しあってたというか、私で力比べしていた…ような。
「どちらにしても不快な事に変わりはないわね」
ああいうタイプは初めて。自由と言うか確固とした自分を持っていると言うのか。
ラティの腕から軽い部屋着を取り身に纏いながらむぅ、と頬を膨らませる。
ん〜何て言うのかしら?自由な人や自己の強い人はグラシアにもたくさんいたのだけど……。
考える内に、璃緒はふと答えに思い当たった。
あぁそうか…あれは―――…。
「ラティ…夕食までまだ時間あるわよね?」
璃緒の質問に、太陽を見て時間を確かめたラティが頷くのを見て、璃緒は満足気に微笑み舌を舐めるとショールを羽織り、踵を高く鳴らしながら扉へと向かう。
なめられて負け続けるのは性に合わないわ。私は龍の血族。誇りを汚されて大人しく黙ってたりはしないって事、教えてあげる。
「姫様…どちらへ?」
「あら…夕食まで殿方をほっとく訳にはいかないでしょう。」
璃緒は不審そうな二人に
「決まってるわ!先手必勝っこちらから乗り込みますわっ!」
胸を張り高らかに宣言した。
―――…あれは、私を全く見てない眼だわ…。
王女としての価値だけを計ってる…そんな眼。
「う……ん」
柔らかな薔薇と蝋の匂いに鼻孔を擽られ、瑯はゆっくりと目蓋を開けた。
まだぼんやりと霞む視界を何度か瞬きをして慣らす。
徐々にはっきりしてくる視界に映るのは大量のぬいぐるみ。大小様々なぬいぐるみの山に瑯は埋もれていた。
「あ――…うん。そう、そうか」
分からない事があると、人ってとりあえずうなずいとくもんなんだな…。
頷き、妙に納得しながら止まっていた頭をフル稼動させ何があったかを思い出す。
そう…俺はあそこに探りに入って…秘宝を知りたくて…見つかって逃げて…それで―――…
「捕まった…のか?」
それにしてはファンシーな牢だと思うけど。
現状を確認しようとぬいぐるみの山から這い出た先は、レースとフリルのふんだんに使われたカーテンに、ふわふわのピンクのカーペット、真っ白に金で装飾が施されたアンティーク物のテーブルに小さな椅子、綺麗に整えられた植木と噴水、散乱された刺繍や編物、天外の付いた真っ白なベッド、ピンクの毛布にくるまる長い金髪の少女。
――――――…少女?
瑯は飛び起きると軽い足取りでベッドに近付き少女を覗き込んだ。少女はぐっすりと眠り込んでいるようで、瑯の気配にも起きる様子はない。
「本当…どこだよ、ここ」
廊下で仁王立ちになり、どちらの部屋を先に訪れようかと真剣に悩む璃緒を見つけ、大きな男がのしのしと近付き、耳打ちする。
「何…?…そう、準備が出来たの?早いわね、ご苦労様バルドス。」
「どういたしまして。んで姫さんは何してんだ?」
「二人に会いに行こうかと思ってたけど…止めたわ。」
璃緒は先に二人がいるはずの廊下にくるりと背を向け歩きだす。
その背にバルドスは声を投げた。
「んで、次の仕事は?」
「ラティを連れて行って。後、その辺の小姓に夕食場所を庭園に変更すると大使と皇子に伝えさせてちょうだい」
「はいよ」
じゃあね、と手を振り去る璃緒の背を見つめながらバルドスは絞りだす様に呟いた。
「姫さん…死ぬなよ……」
悔しいっ悔しいっ悔しいっ悔しいっ!!
蹴り破られそうになる扉をシラクとラティが慌てて開け放つ中を璃緒はずかずかと進んで行く。
ぱっぱとドレスのリボンを解き脱ぎ始める璃緒に悲鳴を上げながら、シラクは人払いをし厳重に戸締まりをし、ラティは衣装ダンスから着替えを一抱え運んで来た。
「姫様ったら…もう!はしたないっ」
「…はしたない……?」
ユラリと振り返る璃緒に二人は嫌な予感を感じ取り、ひいっと小さく叫び抱き締めあう。
「はしたない!そうよどうせ私ははしたないわよっ王女として未熟よっ弱いわよっ悔し――い!!」
「ひぇっ姫様っはしたなくないですから…言葉のあやです…っ」
「そうですそうです。ひ、姫様落ち着いて…」
慌てて宥める二人を背に璃緒はぎゃんぎゃんと喚き続けた。
「落ち着けぇ!?これが落ち着いていられますか!あんな…あんなクセの強い馬鹿がいるとは思わなかった!えぇパーティーは上手くいったわよ楽しんで頂いたわよあの二人のおかげでね……!……あぁ思い出しても腹が煮えくり返る…っ」
ドレスを脱ぎ捨てながら思い出し、苦虫を誤って食べたような苦い表情を浮かべる。
あの後もレノ大使と犀生皇子にパーティー会場は掻き回された。レノ大使の恥ずかしい程の饒舌ぶりに皆崩れそうになり、犀生皇子のだめ押し変態ギリギリ発言に笑えば良いのか赤面すれば良いのか、悔しい事に私は受け流し方が分からなかった。更に私が主導権を得ようとする度、彼らはタイミング良く私の行動を抑えてきた。
…まさかもう裏で繋がってるって事は…無いわよね…?
むしろ牽制しあってたというか、私で力比べしていた…ような。
「どちらにしても不快な事に変わりはないわね」
ああいうタイプは初めて。自由と言うか確固とした自分を持っていると言うのか。
ラティの腕から軽い部屋着を取り身に纏いながらむぅ、と頬を膨らませる。
ん〜何て言うのかしら?自由な人や自己の強い人はグラシアにもたくさんいたのだけど……。
考える内に、璃緒はふと答えに思い当たった。
あぁそうか…あれは―――…。
「ラティ…夕食までまだ時間あるわよね?」
璃緒の質問に、太陽を見て時間を確かめたラティが頷くのを見て、璃緒は満足気に微笑み舌を舐めるとショールを羽織り、踵を高く鳴らしながら扉へと向かう。
なめられて負け続けるのは性に合わないわ。私は龍の血族。誇りを汚されて大人しく黙ってたりはしないって事、教えてあげる。
「姫様…どちらへ?」
「あら…夕食まで殿方をほっとく訳にはいかないでしょう。」
璃緒は不審そうな二人に
「決まってるわ!先手必勝っこちらから乗り込みますわっ!」
胸を張り高らかに宣言した。
―――…あれは、私を全く見てない眼だわ…。
王女としての価値だけを計ってる…そんな眼。
「う……ん」
柔らかな薔薇と蝋の匂いに鼻孔を擽られ、瑯はゆっくりと目蓋を開けた。
まだぼんやりと霞む視界を何度か瞬きをして慣らす。
徐々にはっきりしてくる視界に映るのは大量のぬいぐるみ。大小様々なぬいぐるみの山に瑯は埋もれていた。
「あ――…うん。そう、そうか」
分からない事があると、人ってとりあえずうなずいとくもんなんだな…。
頷き、妙に納得しながら止まっていた頭をフル稼動させ何があったかを思い出す。
そう…俺はあそこに探りに入って…秘宝を知りたくて…見つかって逃げて…それで―――…
「捕まった…のか?」
それにしてはファンシーな牢だと思うけど。
現状を確認しようとぬいぐるみの山から這い出た先は、レースとフリルのふんだんに使われたカーテンに、ふわふわのピンクのカーペット、真っ白に金で装飾が施されたアンティーク物のテーブルに小さな椅子、綺麗に整えられた植木と噴水、散乱された刺繍や編物、天外の付いた真っ白なベッド、ピンクの毛布にくるまる長い金髪の少女。
――――――…少女?
瑯は飛び起きると軽い足取りでベッドに近付き少女を覗き込んだ。少女はぐっすりと眠り込んでいるようで、瑯の気配にも起きる様子はない。
「本当…どこだよ、ここ」
廊下で仁王立ちになり、どちらの部屋を先に訪れようかと真剣に悩む璃緒を見つけ、大きな男がのしのしと近付き、耳打ちする。
「何…?…そう、準備が出来たの?早いわね、ご苦労様バルドス。」
「どういたしまして。んで姫さんは何してんだ?」
「二人に会いに行こうかと思ってたけど…止めたわ。」
璃緒は先に二人がいるはずの廊下にくるりと背を向け歩きだす。
その背にバルドスは声を投げた。
「んで、次の仕事は?」
「ラティを連れて行って。後、その辺の小姓に夕食場所を庭園に変更すると大使と皇子に伝えさせてちょうだい」
「はいよ」
じゃあね、と手を振り去る璃緒の背を見つめながらバルドスは絞りだす様に呟いた。
「姫さん…死ぬなよ……」






