2008/10/06
金狼月6日目
依頼品を届けに深良の部屋に入ると、当の依頼人は書類の山に埋もれていて、俺が入ったのにも気付かない。
書類にサインをする手はいつもより速いのだが、如何せん量が膨大過ぎた。
「今日は…何時にも増して凄いな」
「ん?あぁ何だ瑯、来てたのか。悪いな、今手が離せなくて。お前も手伝え」
俺は足下まで散らばった紙を手に取り、のんびり見ながら答える。
「一般人に触らせちゃマズイだろ…」
「お前なら上手く処理できるよ。お前は俺や璃緒より政治が上手いし」
何だコレ。収穫祭の資料か。
「平民の暮らしを知ってるから、アイツラの対処に上手いだけだろ」
「貴族の本質も理解してる。人心の掌握もお前なら出来るさ。俺が引退したら、お前が政治をやれば良いんだがな…」
新しい企画がわんさか載ってる。…あ、今年は収穫祭の舞手は玖桜だけじゃねぇのか。誰だろ。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。だいたい引退したらやる事あんのかよ?」
深良は書類にサインする手を全く止めずに答える。
「…船乗りになりたいな」
……はぁ?
かなり微妙な顔をしていたんだろう。深良は俺の顔を見て軽く笑い出した。
「以外か?でもな、小さい頃に港に連れて行ってもらって以来、ずっと水夫に憧れてるんだ。」
「ふ〜ん」
そのまま時間は流れ、部屋にはペンの走る音と紙を捲る音だけが響いた。
ふと、深良が静かに口ずさむ。
さぁ行こう 大海原(レラ トゥック セラリオス)
さぁ行こう 嵐の旅(レラ トゥック ストラーン)
焼けつく太陽 なんのその(ファギリア サダム ノーパレニム)
暴れる波 手慣づけて(ジャグリア ウェルス ローディグナム)
そりゃ 櫂持て 帆を張れ 船を出せ(リラ ケサ ラカ ヒィグ ヌガ ボセル ディン)
ほら ここがオレらの楽園だ ホー!(リラ ヒアス ビィゴ エリー ホーッ!)
それは船乗りが皆小さい時から聞かされ育つ、ルクス語の民族歌だった。
「"海女神の微笑み 我にあり(セフィーロ シュミロス ビィゴニア)"が抜けてる」
「そうか」
そう言って、深良は今度は鼻歌を歌いながら、サラサラと書類の山を崩す。
その音は、海岸に寄せ来る波のように、静かに穏やかに、部屋に響いた。
書類にサインをする手はいつもより速いのだが、如何せん量が膨大過ぎた。
「今日は…何時にも増して凄いな」
「ん?あぁ何だ瑯、来てたのか。悪いな、今手が離せなくて。お前も手伝え」
俺は足下まで散らばった紙を手に取り、のんびり見ながら答える。
「一般人に触らせちゃマズイだろ…」
「お前なら上手く処理できるよ。お前は俺や璃緒より政治が上手いし」
何だコレ。収穫祭の資料か。
「平民の暮らしを知ってるから、アイツラの対処に上手いだけだろ」
「貴族の本質も理解してる。人心の掌握もお前なら出来るさ。俺が引退したら、お前が政治をやれば良いんだがな…」
新しい企画がわんさか載ってる。…あ、今年は収穫祭の舞手は玖桜だけじゃねぇのか。誰だろ。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。だいたい引退したらやる事あんのかよ?」
深良は書類にサインする手を全く止めずに答える。
「…船乗りになりたいな」
……はぁ?
かなり微妙な顔をしていたんだろう。深良は俺の顔を見て軽く笑い出した。
「以外か?でもな、小さい頃に港に連れて行ってもらって以来、ずっと水夫に憧れてるんだ。」
「ふ〜ん」
そのまま時間は流れ、部屋にはペンの走る音と紙を捲る音だけが響いた。
ふと、深良が静かに口ずさむ。
さぁ行こう 大海原(レラ トゥック セラリオス)
さぁ行こう 嵐の旅(レラ トゥック ストラーン)
焼けつく太陽 なんのその(ファギリア サダム ノーパレニム)
暴れる波 手慣づけて(ジャグリア ウェルス ローディグナム)
そりゃ 櫂持て 帆を張れ 船を出せ(リラ ケサ ラカ ヒィグ ヌガ ボセル ディン)
ほら ここがオレらの楽園だ ホー!(リラ ヒアス ビィゴ エリー ホーッ!)
それは船乗りが皆小さい時から聞かされ育つ、ルクス語の民族歌だった。
「"海女神の微笑み 我にあり(セフィーロ シュミロス ビィゴニア)"が抜けてる」
「そうか」
そう言って、深良は今度は鼻歌を歌いながら、サラサラと書類の山を崩す。
その音は、海岸に寄せ来る波のように、静かに穏やかに、部屋に響いた。


