金狼月6日目

依頼品を届けに深良の部屋に入ると、当の依頼人は書類の山に埋もれていて、俺が入ったのにも気付かない。
書類にサインをする手はいつもより速いのだが、如何せん量が膨大過ぎた。
「今日は…何時にも増して凄いな」
「ん?あぁ何だ瑯、来てたのか。悪いな、今手が離せなくて。お前も手伝え」
俺は足下まで散らばった紙を手に取り、のんびり見ながら答える。
「一般人に触らせちゃマズイだろ…」
「お前なら上手く処理できるよ。お前は俺や璃緒より政治が上手いし」
何だコレ。収穫祭の資料か。
「平民の暮らしを知ってるから、アイツラの対処に上手いだけだろ」
「貴族の本質も理解してる。人心の掌握もお前なら出来るさ。俺が引退したら、お前が政治をやれば良いんだがな…」
新しい企画がわんさか載ってる。…あ、今年は収穫祭の舞手は玖桜だけじゃねぇのか。誰だろ。
「馬鹿言ってんじゃねぇよ。だいたい引退したらやる事あんのかよ?」
深良は書類にサインする手を全く止めずに答える。
「…船乗りになりたいな」
……はぁ?
かなり微妙な顔をしていたんだろう。深良は俺の顔を見て軽く笑い出した。
「以外か?でもな、小さい頃に港に連れて行ってもらって以来、ずっと水夫に憧れてるんだ。」
「ふ〜ん」
そのまま時間は流れ、部屋にはペンの走る音と紙を捲る音だけが響いた。
ふと、深良が静かに口ずさむ。
さぁ行こう 大海原(レラ トゥック セラリオス)
さぁ行こう 嵐の旅(レラ トゥック ストラーン)
焼けつく太陽 なんのその(ファギリア サダム ノーパレニム)
暴れる波 手慣づけて(ジャグリア ウェルス ローディグナム)
そりゃ 櫂持て 帆を張れ 船を出せ(リラ ケサ ラカ ヒィグ ヌガ ボセル ディン)
ほら ここがオレらの楽園だ ホー!(リラ ヒアス ビィゴ エリー ホーッ!)
それは船乗りが皆小さい時から聞かされ育つ、ルクス語の民族歌だった。
「"海女神の微笑み 我にあり(セフィーロ シュミロス ビィゴニア)"が抜けてる」
「そうか」
そう言って、深良は今度は鼻歌を歌いながら、サラサラと書類の山を崩す。
その音は、海岸に寄せ来る波のように、静かに穏やかに、部屋に響いた。
by 遊 水羽  at 02:35 |  瑯の日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑

陽露月6日目

玖桜が井戸から冷やした野菜を取り出しているのを眺めていると、向こうから少し固い表情の璃緒と、その後ろを寄り添い歩く揶矯が見えた。
「嵐が来た…」
微笑む璃緒と泣く玖桜を見て、仲直り出来たのだとほっとする。
最近玖桜はぼーっとする事が多かったから心配してたんだ。
「揶矯、これは何な訳?」
「知るか。璃緒様に嫉妬してどうする」
知ってるクセに。
「うるせえ。」
確かに、玖桜を元気に戻すのは俺でありたかったけどさ。
その役は俺のじゃなかったんだよ。
まだ、俺は玖桜を支えきれねぇ…のかな。
「揶矯」
「何だよ」
「ちゃんと守れよ?璃緒は俺にだって大事な…うん」
揶矯の役は守る者。
じゃあ俺は…何なんだろう。
守り支える者でありたい。暗い部分を共有して、受け止めて支える。
それが王の盗賊である俺の役目。
璃緒だけじゃなくて、揶矯も、玖桜も、皆。
大好きな人皆を助けたい。
神様。
頑張ってるからさ
どうか、皆を支えるだけの心の強さと広さを、俺に。
by 遊 水羽  at 23:59 |  瑯の日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑

繁草月7日目

今日は七夕祭。大通りはたくさんの屋台が並び活気づいている。
夜には泉のあるラマ大広場で踊りを織姫に扮した娘の何人かが(どうして織姫が何人もいるのか、というツッコミはあったが、娘達の激しい非難にあい口をつぐんだ)踊ったり、花火が打ち上げられたりするらしい。
玖桜も織姫に選ばれた(玖桜のいつも踊っているのとは違ってウィスカ曰く"汚い踊り"らしいので玖桜は相当練習していた)のだが、それまでは璃緒とお祭りを回るらしい。
俺はしょうがないので揶矯と射的ゲームに興じている。
「何が楽しくて男二人でお祭り…」
パンッ
「うるさい。俺だって同じだ。せっかくの休暇なのに」
パンッ
「いっそ女装でもしてこいよ、女顔」
パンッ
「止めろ瑯。本気で冗談にならない」
パンッ
「何で?面白そうじゃんか」
パンッ
「……………」
「何だよ早く射てよ。俺の勝ちで良いのか?」
揶矯は銃を下げ、真剣な面持ちで足元を見つめている。
「…一昨年の七夕祭を覚えてるか?」
「一昨年っつ―と…俺が13でお前が15か?」
「あの時ミス織姫を決めただろう」
「あ〜。興味ねぇから見なかったけど…」
 錬がすっげー美人だった!って騒いでて、お頭とペドが腹が捩切れるって言いながら大笑いしてた年だ。
「俺だ」
 …………………。
「……え〜…と?」
「だから、あれは俺だったんだ」
「そっかぁ…知らなかったぜ」
「ちょ、待て逃げるな瑯っ」
「うるさいっそんな趣味を持つ奴を友人に持つ気はねぇっ」
「違う!あれは璃緒様とバルドスに無理矢理っ」
「瑯、揶矯さん。周りの人が怯えてる」
「うわっ玖桜!いつから」
大量の綿飴に顔を半分隠されながら呆れ顔の玖桜が立っていた。
その後ろにはナツメが。よッスと挨拶するので俺も返す。
「あれ…璃緒は一緒じゃねぇのか?」
玖桜は少し困った顔でナツメを見上げる。
「何か体調を崩されたらしい」
 璃緒が!?
「玖桜と約束してる日に?ありえねぇだろ」
玖桜はやっぱり?と更に困った顔になり、ナツメは気にせず射的をし始め、揶矯は後ろで違うんだ!と喚き続け、射的屋のオヤジは利益が〜っと悲鳴を上げ、周りはやっぱり活気付いている中で、俺はどうすれば良いのか咄嗟の判断に困っていた。
by 遊 水羽  at 10:16 |  瑯の日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑

天露月23日目

「雨が続きますね…」
玖桜のつぶやきに俺は本から顔を上げる。
 つまんない?
そう尋ねると少し困った様に微笑む。
「読書も好きですから、つまんなくはないですが…」
 ですが?
「璃緒ちゃん達に会えないのは、ちょっと寂しいです」
そう言って、玖桜は読書に戻る。
 そっか。
流石の璃緒も雨の日は逃亡を控えるらしい。――…城外に限り、だが。
天露月は、雨で川が氾濫しないよう騎士団のメンバーも各地へ水位調査などに旅に出るらしい。
なので止める揶矯がいなくて大変なんだ、と璃緒の侍女の小麦色の髪の女が言っていた。
そういや小さい頃は、揶矯がいなくなる度に遊び相手がいなくなってふて腐れたなぁ…。
うわっ恥いっ
あの頃を思い出すとおかしくなる。
今は玖桜やテイル、トーマ、錬がいるから、遊び相手に事欠く事はねぇからな。
「どうしました?」
思い出して顔がにやけていたのか、玖桜が興味深そうに見つめてくるので、玖桜に昔の事をちょっと話す。
 だから璃緒も好きな奴がいなくて寂しいだろうな、と思ってさ。
 遊びに行くなら付き合うぜ。
ナツメや皐月と剣の手合わせをするのも、面白そうだし。
玖桜が不思議そうに呟いたが、その時、雷鳴が轟き、そちらに注意を引かれた為に俺は聞き取る事ができなかった。
 ごめん、何か言った?
「え…。ううん。あ、じゃあ次の雨の日は一緒にお城に行ってくれる?」
もちろん、と大きくうなずくと玖桜は嬉しそうに微笑んだ。
by 遊 水羽  at 19:44 |  瑯の日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑

天露月1日目

カッとナイフが一直線に飛び、壁に突き刺さる。
ナイフ投げ100本…終了っと。
「瑯坊…一つ良いッスか?」
何?と俺は首をかしげる。
「昔みたいに外で練習してくだせえや」
目の前には朝食に使った食器を拭くペド…とあちこちに投げられたナイフ。
ち…っことごとく避けやがって。
「瑯坊にはまだ無理無理…ってうひゃあっ」
しゅっと風を切り裂いて俺の手から放たれた剣はペドの右手の甲を薄く裂き、その後ろの壁に突き刺さった。
よし、やっぱり動くものに当てる練習はペドに限る。
by 遊 水羽  at 01:44 |  瑯の日記 |  comment (0)  |   |  page top ↑
プロフィール

Author:遊 水羽
+ゆとりのオリジナルキャラクター
瑯row 玖桜cou 揶矯yata 璃緒akio
の日記形式で展開します。
空飴風味本舗で描く本編とはまた違った瑯達の世界をお楽しみ下さいv
※キャラクター基本設定に変更はありません。
設定は国などをまとめ次第、空飴風味本舗にてUPさせて頂きます。


=言いたいことをぽつぽつと。=

いらした方はぜひ足跡残して下さいなv
コメント大歓迎です!どうぞゆとりに知恵を…!!

また字間違い等ありましたらご連絡下さいっ
ついでに遊がBLに走りそうだったらどうぞ止めてやってください。
ここだけの話、遊の脳内では最初揶矯×瑯の話でした。玖桜はオマケだったという…頑張れヒロイン笑

ゆとりは文才皆無ですので稚拙な文に不快になられる方は全力でこの場から逃げることをオススメします。

未だにキャラの口調が掴みきれてなかったりorz
日記形式ってのが分かり難いんだ←

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地道に本舗→別館と足を運んで下さい

更新は不定期になります。
文が完成したらこっそりと更新してます。

ではでは少しでも楽しんで頂ければ幸です(´v`*

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